4月中旬から5月中旬にかけて咲くのが「躑躅(ツツジ)」。
5月下旬から6月中旬にかけて咲くのが「皐月(サツキ)」。
躑躅(ツツジ)なんて髑髏(ドクロ)と似ていてちょっとやっかいなイメージじゃない?
そう思われるのも無理はなく、この「躑躅」という漢名、中国・長江流域の各省から広東省・福建省にかけ分布する小低木の毒性「シナレンゲツツジ」を羊が食べてしまい、足をバタバタさせて死んでしまったことから「羊躑躅」と名付けられた。これを日本のレンゲツツジに当てはめツツジ全般が「躑躅」となったが、中国ではツツジ全般ではなく毒性のある羊躑躅のみを躑躅と書くので、躑躅と見れば概ね猛毒性のイメージだという。
躑躅には、ツツジ科内ツツジ属だけでも世界で600種、日本でも40種以上と多くのファミリーを持ち、その姿の差違は微々たるものである場合が多く、ツツジ属の中でも「サツキ」と「シャクナゲ」を除いたものを総じて「ツツジ」と呼んでいる。
なかでも似たような姿の皐月(サツキ)と躑躅(ツツジ)は、なぜ区別されたのか。そこにはまたも日本の神事の影が見え隠れ、というよりも、紐解けばやっぱり日本の稲作スケジュールそのもの。皐月とは「田植えの月」を指すわけです。
皐月(さつき)は5月を表す読みの音。
ただし旧暦「5月」は現在の5月下旬〜7月中旬であり、二十四節気では6月の夏至を含む期間を「5月(皐月)」とし、同じく5月下旬〜7月中旬を指す。
この時期、稲作スケジュールでは最も大切な命を根付かせる「田植え」が行われる。東西南北、気温風土により土地土地で差はあるものの、一般的に田植えの時期は「5月下旬」とされていた。
桜の章を筆頭に度々書き連ねているとおり、日本でいう「サ」とは「田の神」を指す音であり、「サツキ」とは「田(サ)の月」。また同時に「稲穂の苗」は「早苗(サナエ)」でありこれを植える月を「早苗月」いい、これが省略され「皐月」となったという。そして続く「水無月(6月)」は「水の月」、植えた苗の育成にとっても命の根源「水」。この大事な月を含んだ期間を「皐月」といった。
豊穣が全てのこの日本国民にとって「皐月」は命の期間。
春の花も任務を終え、新緑が碧々とした夏の緑に変わっていく。
紺碧の世界に色を添えるのは「サツキ」の仕事。
陽射しも強くなる初夏。
「ツツジ」よりも少し小ぶりな「サツキ」は、その身を寄せ合い自身の葉や木々の影に少し隠れるようにして田植えを見守る、田植え応援のために生まれた特別な「ツツジ」が「サツキ」であると言えましょう。
サツキがその応援を終えた頃、自然界は次なるビックイベント「夏至」に突入します。夏至は「昼が最も長い日」であり、太陽のエネルギーが長時間にわたり得られる日。
この日に向けての心構えや良き行動は、また来月の月刊「ageUN」内の各種コラムをお楽しみに☆
(※)参考wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ツツジ
(※)参考 旧暦月の名前の由来
http://book.geocities.jp/ukoku_leo/sub1/old_month_1.html
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【コラム・いけばな】赤木マキ
赤木マキ(華道家/DJ)
華道家元池坊 いけばな正教授
1997年よりいけばなを学び、2003年より個人創作発表を開始。
都内クラブをベースとしたパフォーマンス、企業レセプション装花等を経て、植物関連等のコラムを執筆。花と植物そのものの計り知れないエネルギーを敬い、人と植物と宇宙の関係性を研究する。akg+、makiAKAGIの名義にてDJ・音楽活動を行い、いけばな・音楽ともにその可能性の拡張と概念の更新を理念としている。http://akagimaki.x0.com
写真:井田宗秀 http://ida.viewbook.com